湊線を存続させるための講演会
湊線再生に関する調査の概要
(茨城県及びひたちなか市から受託)
(株)ライトレール 代表取締役社長
阿部 等
平成19年5月27日 |
1.調査の基本コンセプト
- 市民を対象としたアンケート
- 316人中の179人(57%)が湊線を利用せず
- 乗らない理由「他の交通手段の方が便利」
- 湊線再生には利便性向上が肝要
1)適正な方策による利便性向上を通した
利用者増・収益改善・地域貢献向上を図る
2)利便性向上の具体的方策は、
本数増・スピードアップ・ドアツードア性の3点
3)創意工夫と先端技術の導入により、
経費増は極力抑える |
2.富山ライトレールから学ぶ
- JR西の富山港線を継承しLRT化
- 地方鉄道再生・LRT普及の先進成功例
- 平日:2,266人/日⇒ 4,988人/日
- 土休日:1,045人/日⇒ 5,576人/日
- 運賃値下げの増客効果を補正して平均し、
1,917人/日⇒ 4,377人/日、2.3倍
- Mission Possible
- 富山市中心市街地活性化基本計画:
・ 公共交通の活性化により車に頼らずに暮らせる中心市街地の形成 |
大幅な利用増となった要因
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3.湊線沿線のポテンシャル
- 1km圏夜間人口:いずれも5.4万人
- 湊線のポテンシャルは決して低くない
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4.現行ダイヤ時刻表形式
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ダイヤ形式
- 終日、2編成が行き来
- 那珂湊で行違い
- 平均して26分走行、14分折返しの繰返し
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5.スピードアップ
- 加減速の良い車両に統一
- 新しい車両3両+他社中古車両の2両
- 最高速度を現行50km/h ⇒ 70km/h
- 軌道状態は良好
- 急曲線は速度制限
- 鳴動時分確保が高価となる踏切は速度制限
- 23分走行が可能に
- 現行設備のまま30分サイクル化が可能 |
6.改正ダイヤ時刻表形式
- 23分走行
- 7分折返し
- 30分おき
- パターン化
- 終電繰下げ
- 本数1.4倍
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ダイヤ形式
- 終日、2編成が行き来
- 編成数・運転士数変らず=人件費増加せず
- 車両・設備の保守費の増加はわずか
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7.戦略的運賃、各種割引
- ハイテクによる値付けの工夫、顧客管理
- ICカードによる自動改札を活用
- 利用区間・曜日・時間帯等で運賃を変動
- 多頻度利用・家族・グループ・乗継ぎ割引
- 学生・高齢者等への公的補助のデータ管理
- 導入の課題
- PASMOへの加入は相応の経費
- きめ細かい施策実行にはシステムの開発
- 実行には、さらなる調査を要す |
8.その他の利用促進策
- 駅の利便向上
- 勝田駅の地平に東出入り口新設
- 日工前駅の終点側への移設
- 柳が丘団地の裏に新駅設置
- フィーダー輸送
- タクシー会社と提携して乗合タクシー
- 自転車の車内持込み
- 商店等との連携
- 商店等の負担で電車運賃を割引き
・ 勝田及び那珂湊の商店街、おさかな市場等 |
9.DMVの導入
- DMV(Dual Mode Vehicle)の特徴
- 在来鉄道車両と比べて低価格かつ高性能
- 線路外の市街地や施設へ直接乗入れ
- DMVの使い方
- おさかな市場・大洗水族館へ乗入れ
- 昭和通を経由したループルート
・ 専用車線・交差点優先信号⇒ 速達性、
定時性
- もう1つのメリット
- 期間を区切って区間毎に線路を使用停止
・ 道路迂回して営業継続し、低コストに線路改良 |
メディア掲載等
H19.5.28 茨城新聞 朝刊20 ページ
茨城交通湊線存廃で講演会
存続にあふれる熱気 ひたちなか
ひたちなか市内を走る茨城交通湊線の存廃問題で、廃線の危機を乗り越えるための全市的な盛り上げを図る「湊線を存続させるための講演会」(湊鉄道対策協議会、おらが湊鐵道応援団主催)が二十七日、同市青葉町の市文化会館で開かれた。地方鉄道の可能性に関する講演や湊線の利用増に向けた斬新な提案などが行われ、会場は存続に向けた熱気に包まれた。
湊線を考える集会は三月に旧那珂湊地区で開かれたのに続き二回目。定員四百人の会場は満杯で、市民の高い関心をうかがわせた。
冒頭で同協議会長を務める本間源基市長は「市民のために残していかないといけないが、一方で支えるのも市民。公共交通を残していくのは地域の使命だ」とあいさつ。茨城交通の竹内雄次常務は事業者としての一層の経営努力を強調した上で「市民、行政により主体的に参画していただく形をつくっていかないといけない」と述べ、分社化の検討も行われていると説明した。
基調講演した大東文化大の今城光英副学長は苦境が続く地方鉄道の中でも存続・復活の動きが出ている現状を説明。「社会的なインフラである鉄道をぜひとも新しい時代に活用してほしい」と呼び掛けた。
第三セクターとして存続を実現した富山県にある万葉線の吉田千秋総務課次長は市民、行政、事業者が一体になった取り組みを説明し「みんなで頑張ればどうにかなる」とエールを送った。
県、市から委託を受け湊線再生の調査を行ったライトレール社の阿部等社長は、利用促進に向けて良好な線路状況を踏まえたスピードアップによる本数増加を提起。勝田駅東口から直接ホームに入れる改札の新設なども提案した。
最後に、旧那珂湊地区にある県立高校三校の生徒が「通学になくてはならない鉄道」「愛着ある電車として走り続けてほしい」などと訴えた。
H19.5.28 読売新聞 茨城版
湊線存続次々訴え
ひたちなかで講演会
廃線話が浮上している茨城交通湊鉄道線(勝田―阿字ヶ浦)の存続を訴える講演会が27日、ひたちなか市で開かれた。沿線住民らでつくる「おらが湊鐵(てつ)道応援団」と、市や県などが参加する「湊鉄道対策協議会」が、市民に湊線の必要性を理解してもらおうと企画した。
大東文化大の今城光英副学長は、欧州各国で地方鉄道が見直されていることや、国内各地で廃線の危機にある鉄道の現状を紹介した。「地方鉄道は地域の社会的インフラで、地域が一丸となって支える視点が大事」と話すと、市民は真剣に耳を傾けていた。
続いて、会社員の大内秀一さんらが湊線を応援するイメージソング「季節の風」を披露。湊線沿線の高校に通う生徒らが壇上から存続を訴えるなどした。
参加したひたちなか市相金町、主婦鎌田美津子さん(60)は「車を運転できないので廃線は困るし、愛着があるのでいつまでも残して欲しい」と話していた。
H19.5.28 毎日新聞 茨城版
茨交湊線の存廃問題:現状や活性化策、住民ら耳傾け
−−ひたちなかで講演会
茨城交通湊線(勝田−阿字ケ浦、14・3キロ)を存続させようと、ひたちなか市や市商工会で作る湊鉄道対策協議会などが27日、同市の市文化会館で講演会を開催した。有識者らが説明した湊線の現状や活性化策に、駆け付けた住民らは熱心に耳を傾けた。
講演会で、県と市から同線の再生に向けた調査委託を受けているコンサルティング会社「ライトレール」の阿部等社長が独自案を披露。本数が少ない点や終電が午後10時20分と早いことなど問題点を指摘し、「増便や団地など人が集中する地域に新駅を設置するなどの利用促進策がある」と主張した。
また、県交通対策室の担当者は、05年3月に廃止になった日立電鉄の地域の影響を報告。代替バスでは輸送人員が3割まで落ち込んでいる現状を述べた。【栗本優】
H19.5.28 常陽新聞
湊鉄道の存続訴え、講演会
那珂湊地区に続き、勝田地区で
茨城交通湊線(勝田―阿字ケ浦間、十四・三`)の存続のため支援策などを協議している湊鉄道対策協議会(会長・本間源基ひたちなか市長)と「おらが湊鉄道応援団」(佐藤彦三郎団長)は二十七日、ひたちなか市青葉町の市文化会館で、「茨城交通湊線を存続させるための講演会」を開いた。市民ら約四百人が参加、支援のあり方や存続の可能性について考えた。
三月に那珂湊地区で開いたのに続き、市全体の問題として考えていこうと勝田地区でも企画。本間ひたちなか市長は「日立電鉄線は廃止後、代替バス利用が三割で、七割はマイカーに移った。バスで簡単に代替が利くというものではない。地球温暖化問題など今の時代に合った乗り物として、鉄道は見直されるべき。市全体の問題として考え、何とか知恵を集め、市民の協力を得て残していきたい」と訴えた。
今城光英大東文化大副学長が「湊鉄道と地域の紐帯(ちゅうたい)」、廃止の危機から全国発の第三セクター路面電車の万葉線(富山県)の吉田千秋総務課次長が「市民が支える路面電車『万葉線』―事業者からみた鉄道活性化」と題してそれぞれ基調講演したほか、県企画課交通対策室の鈴木博係長が日立電鉄線廃止後の地域への影響、県と市の委託で湊線再生の調査を担当したライトレールの阿部等社長が調査の概要を報告した。
阿部社長は、利用者増には利便性の向上が必要だと指摘、スピードアップや運行本数の増加、最終時刻を遅くするなどの方法を具体的に示すとともに、導入が検討されているDMV(デュアル・モード・ビークル、道路も走れる車両)に期待を示した。
講演会では湊線応援歌「季節の風」が披露されたり、沿線の県立海洋、那珂湊一、那珂湊二の三高校の生徒十五人が登壇し、「湊線を残そう」とアピール、存続を訴えた。
茨城新聞
平成19年6月5日
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