ロボラボトークセッション特別編
新たな都市交通実現に向けたビジネスモデル
− 循環型社会に求められる新交通ビジネス −
(株)ライトレール 代表取締役社長
阿部 等
平成19年8月8日 |
1.時代状況 |
(1)はじめに
- 子供の頃からの思い
- クルマが世の中に多過ぎる
- 鉄道が本来の能力を発揮できていない
- Mission Possible
- 交通問題ヲ、解決セヨ
- 交通問題を人々の利便性や幸福度を犠牲にせずに解決したい |
|
(2)自動車交通の限界
- 問題は既に充分に顕在化
- 道路渋滞、エネルギー、環境、交通事故
- 高密度な交通ニーズには最適でない
- 自動車へ過度に依存した交通体系
- さらなる道路建設や自動車性能向上では問題は解決し得ない
- 脱却の処方箋を描けねば人類は環境問題とエネルギー問題で滅亡
- 米、日欧に続き中国、インド、アフリカへモータリゼーションの波?
|
(3)自動車への過度の依存の問題点
- 空間利用の非効率性
- エネルギー利用の非効率性
- 環境負荷の大きさ
- 交通事故の頻発
- 車を運転できない人の移動制約
- 中心市街地の衰退
|
(4)交通システムの「所有」から「利用」へ
- 「個別」交通と「共用」交通の区分
- 交通ニーズが低密度なら「個別」交通
- 高密度なら「共用」交通が効率的
- 「個別」交通システムを「所有」
→ 「共用」交通システムを「利用」
- 人々の利便性や幸福度を犠牲にせず交通問題を解決
効率的な空間利用、効率的なエネルギー利用、 小さな環境負荷、高い安全性、 誰もが自由に移動、中心市街地の活性化
|
2.富山ライトレールから学ぶ |
video
ユーザー名・パスワード:video
|
(1)富山ライトレールの成功
- 地方鉄道再生・LRT普及の先進成功例
- 国も公共交通を大切にする
- 目標3,400人/日に対し前年秋2,266人/日
- 平均:1,917人/日 ⇒ 5,156人/日、2.7倍
- 初年度黒字決算
- 人口も増加傾向へ転換
- まちづくりとの関連
- 富山市中心市街地活性化基本計画:
効率的な空間利用、効率的なエネルギー利用、 小さな環境負荷、高い安全性、 誰もが自由に移動、中心市街地の活性化
|
(2)予想外の大幅な利用増となった要因
|
|
(3)全国の状況
- 脱クルマが求められていながら、
- 地方鉄道:次々と廃線が進む
- LRT:採算性を確保できず
- 地方鉄道再生・LRT普及の現実
- 利便性が低い、高コスト構造
- 低質で高いものが選択されないのは当然
- 本来のライトレールの意味
- LRT ≠ 超低床の路面電車、車を排除
- コストが低い、手軽に乗れる 等
|
(4)これからの交通ビジネスのあり方
- 今までの交通事業者の思考パターン
- 利用者数は、沿線人口等で確定
- 経費節減のため運行本数は必要最低限
- 富山ライトレールで証明された
- 利用者数は、サービスレベルによる
- 今後の取組み
- サービス向上を基軸とした鉄道経営
- 高コスト構造の打破も重要
- ビジネスとしての視点を!
|
3.交通問題の解決に向けた
具体的な取組み |
(1)「共用」交通が選択されるために
- 速達性
- 交通機関の命
- 高頻度運転
- 自動車がなかった時代とは違う
- ドアツードア性
- 軌道交通の最大の弱点
|
(2)LRTとバスのコスト比較
|
video
ユーザー名・パスワード:video |
(3)救世主となるDMV
- DMV(Dual Mode Vehicle)の特徴
- JR北海道が開発の線路・道路兼用車
- 在来車と比べて低価格かつ高性能
- JR北海道が4月から試験的に営業運転
- 全国の鉄道関係者が大きな期待
- DMVの使い方
- 線路外の学校・団地・病院等へ直通
- 線路上は運転士1名で連結運転
- 将来は乗務員免許の簡易化
|
DMV活用パターン(往路)
|
DMV活用パターン(複路)
|
(4)(株)ライトレールの取組み
- 当座の取組み
- 公共交通活性化の助成金を活用し、
・ 鉄道の利便性向上に必要な技術開発
・ 地方鉄道再生の調査受託
・ DMV活用方策の提案
- 近未来の目標
- 地方鉄道再生の成功モデル実現
- 鉄道経営への進出
- コンサル・経営の立場でLRT普及へ貢献
|
4.規制改革により
交通がビジネスチャンスに! |
(1)「公共」交通と称するが故の発想の呪縛
- 「公共」交通と「私的」交通の区分
- 「公共」交通
・低運賃、コスト度外視の安全至上主義
- 「私的」交通
・自由な価格設定、事故は自己責任
- 結果的に「公共」交通は
- 不便、高コスト、低収益
- 公的補助なしには事業が成立せず
|
(2)「公共」交通への公的補助のデメリット
- 社会的便益が黒字と言いつつ、
- 事業者のモラルハザード
- 政治家の我田引鉄、住民の我がまま
- 安くサービス生産される訳でなく、
- 非利用者から利用者への所得移転
- 適正コストに圧縮する努力を怠る
- LRT:2.31億円/24席=1,000万円/席
- バス・マイカー:50万円/席以下
|
(3)利潤最大化の価格設定権
- 事業者に利潤最大化の価格設定権
- 戦略的な価格設定で利潤最大化
・距離、曜日、時間帯、立着席、利用実績による
・ICカードや自動改札によるハイテク運賃収受
- 政府が社会的強者→弱者へ所得再分配
- 都市から地方
- 非子育て世帯から子育て世帯
- 健常者から高齢者・身障者
|
(4)運転士の免許基準の規制改革
- 運転士の免許基準の相違の結果
- 運行1時間当り間接経費含む人件費
・ 鉄道:5,000〜15,000円、バス:3,000〜10,000円
- 運転士の免許基準を規制改革
- 事故防止システム導入で安全確保
- LRT運転業務を地場会社へ委託
- 並行するバス路線を廃止
- LRT導入をタクシー会社反対せず
|
(5)自動車の適正な費用負担
- 自動車は受益者負担していない
- 鉄道と自動車:公正な競争でない
- 民間による鉄道ビジネスを妨害
- 集客施設等の駐車場を適正価格に
- 道路整備特定財源制度の矛盾
- 道路関係予算の3分の1に一般財源
- 自動車諸税を増税して受益者負担に
- 環境負荷分を環境税として課税すべき
|
5.おわりに |
(1)時代の風
- 自動車への過度の依存への疑問符、
反省
- 中央官庁や自治体の交通関係部署の合
言葉
- 官の財政制約を開けた民間活力への
期待
-欧米の税金投入モデルは理想解でない
- 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律
-地域公共交通総合連携計画の作成及び
実施
-新地域旅客運送事業の円滑化
- 満員電車のなくなる日(仮題)
- 秋に、角川SSCの新書として出版予定
|
(2)なぜ起業した?
- この人生においてやりたいこと
- 交通問題を解決したい
- ビジネスチャンスとしても大きい
- 既存業界の発想
- 交通問題はビジネスでなく政治問題
- 交通は安全・安定輸送が唯一最大の使命
- 集客力を活かし周辺ビジネスで収益追求
- 起業に迷いはなかったか?
- 細川社長との出会い
- 死の床に伏した時、後悔は残さないか?
|
(3)国交省の公共交通活性化の報告書
- 地域による地域のための公共交通の活性化・再生を目指して
- 地域によっては、必要な情報・データやノウハウの蓄積、人材が不十分
- 地域公共交通の活性化・再生に関する計画の策定には専門的な知識・技術が必要
- コンサルタント等の専門家や専門機関による知識、情報やノウハウの活用が有効
|
(4)ビジネスチャンスの広がり
- 交通に関する社会の現実
- 自動車に代る便利な交通システムを買いたい人が世界中に溢れ、しかも、それを売れる人が非常に少ない。
- 自動車に代る便利な交通システムを作る方法を知りたい人が世界中に溢れ、しかも、それを教えられる人が非常に少ない。
- 交通問題 = ビジネスチャンス!
|
(5)配布資料
|